新作・梅むら夫婦
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8月に恒例の上映会を開きます。
新作は「梅むら夫婦(仮題)」
まだまだ撮影中です。
以前から話に出ているお子さんを亡くされたご夫婦の話です。
去年から撮影しているテープを見返していると、お父さんの物静かさが際立ちます。
話す時は話すのですが、口数が多い方ではなく優しい穏やかな雰囲気を醸し出しています。
先日、お父さんの和菓子作りの様子を撮らせてもらいました。
和菓子のことや兄弟のことを話してくれて、珍しくお父さんと二人でゆっくり話せる時間が持てました。
12人兄弟として下駄屋に生まれ、ほとんどの兄弟は10歳になる前に亡くなり、残ったのはお父さんを含めて2人だけだったそうです。
15歳で叔父の経営する浅草の和菓子屋に弟子入りし、故郷で店を開いた直後にお母さんと結婚したのだとか。
当時のことだからお見合いなのですが、何故お母さんと結婚することを決めたのか聞いてみました。
「なんでって、、、乗りかかった舟だからねえ」と笑っていました。
乗りかかった舟
なんだかお父さんらしい言葉のように感じました。
お子さんの話を聞いても、悲しいとか辛いとかはいわないお父さん。
でも、二度ほど「張りがなくなっちゃったんだよ、あの子がいないと面白くないんだよね」と言っていました。
お子さんが亡くなったことについて話したのはその一言だけでした。
お母さんが泣いている間はずっと静かに聞いていて、たまに所在無さげにタバコを吸っていました。お子さんを亡くして、病気知らずのお父さんは体を壊して久々に病院に行ったそうです。
多くは話さなくても、お父さんの中にも大きな喪失感があるのだと思います。
それでも、毎日笑顔でお店に出るご夫婦。
お父さんはお子さんとお母さんとお店をやっていた頃の目の回るような忙しさを誇らしげに語ってくれる。
「働いてるのが普通だからね、これが普通なんだよ。
生きていくのは大変だけど、しょうがない。生きていかなきゃいけないもんねえ」
と顔をしわくちゃにして笑う。
なにがあっても続いていく日常を二人で歩いていく。
お母さんもお父さんも口を揃えて、死ぬまで働いていたいと言っていた。
お父さんは口には出さないけど、お母さんという乗りかかった舟を自ら選んだのだろう。
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Comment
・・・あぁ、生きていくってそうゆうことだよな・・・と、じんわりと感じました。
新作の完成、たのしみにしています[E:shine]